公共工事の図面提出要件|電子納品の基本を解説
公共工事で図面を電子納品する際、ファイル形式やフォルダ構成のルールを正確に守らなければ、発注者から差し戻しを受けることになります。本記事では、国土交通省「CAD製図基準」と「電子納品要領」に基づき、図面提出に必要な具体的要件を実務者向けに解説します。
電子納品とは|紙からデータへの提出義務化の背景


電子納品とは、公共工事の成果品(図面・報告書・写真など)を電子データとして発注者に提出する仕組みです。国土交通省は2001年度から電子納品を導入し、現在では直轄工事において原則すべての成果品を電子納品とすることが義務化されています。
電子納品が義務化された背景には、以下の課題がありました。
- 紙図面の保管スペースが膨大になり、維持管理時の検索に時間がかかる
- 紙の劣化により、数十年後の改修工事で図面が読めなくなるリスクがある
- 複数の発注者・受注者間でデータを共有・再利用できない
国交省の「工事完成図書の電子納品等要領」(令和5年3月改定版)では、成果品の作成・提出方法が詳細に定められています。区画線工事を含む土木工事では、この要領に準拠した電子納品が求められます。都道府県・政令指定都市でも国交省要領を準用するケースが大半ですが、独自の追加ルールを設けている自治体もあるため、発注者への事前確認が不可欠です。
電子納品のファイル形式とフォルダ構成ルール


電子納品では、成果品の種類ごとに使用するファイル形式とフォルダ構成が厳格に規定されています。
フォルダ構成(国交省「電子納品等要領」準拠)
電子納品のメディア(CD-R・DVD-R)のルートには、以下のフォルダを配置します。
- DRAWINGF/ — 図面フォルダ。CADデータ(SXF形式)を格納する
- PHOTO/ — 写真フォルダ。工事写真をJPEG形式で格納する
- OTHRS/ — その他フォルダ。施工計画書や品質管理資料などをPDF形式で格納する
- INDEX_C.XML — 工事管理ファイル。納品物全体の目録情報を記述する
- DRAWINGF/DRAW.XML — 図面管理ファイル。各図面の属性情報(図面名・縮尺・図面番号など)を記述する
ファイル形式の規定
- CAD図面: SXF形式(.sfc または .p21)。SXFはCADデータ交換のための国内標準形式で、異なるCADソフト間でのデータ互換性を確保する目的で策定された
- 報告書・帳票: PDF形式。OCR処理済みで文字検索可能な状態が望ましい
- 写真: JPEG形式。解像度は100万画素以上が推奨される
- 管理ファイル: XML形式。DTD(文書型定義)に準拠して記述する
DWG形式やJWW形式で作図していても、電子納品の際にはSXF形式への変換が必須です。変換時にレイヤー名や線種が崩れることがあるため、変換後の目視確認を必ず行ってください。
SXF形式の基本|SFCとP21の違いと選定基準


SXF(Scadec data eXchange Format)は、国土交通省が推進するCADデータ交換標準です。SXFには2つのファイル形式があり、用途に応じて使い分けます。
SFC形式(フィーチャコメント形式)
- ファイル拡張子は .sfc
- テキストベースで可読性が高く、ファイルサイズが比較的小さい
- 簡易な図面やデータ確認用途に適している
- SXFレベル2までの図形要素に対応
P21形式(STEP/AP202形式)
- ファイル拡張子は .p21
- ISO 10303 STEP AP202に準拠した国際標準形式
- SFC形式より多くの図形要素や属性情報を保持できる
- 国交省直轄工事での電子納品では P21形式が標準とされている
どちらの形式を使うかは発注者の指定に従います。指定がない場合は、P21形式を選択するのが安全です。区画線工事の図面では、横断線・矢印・文字記号などの要素が正しく変換されるか、提出前にSXFブラウザ(国交省提供の無料ビューア)で確認することを推奨します。
CAD製図基準の必須チェック項目一覧


国土交通省「CAD製図基準」(令和5年3月改定版)は、電子納品する図面の作図ルールを定めた基準書です。以下の項目は、チェックで不備を指摘されやすいポイントです。
レイヤー名の命名規則
レイヤー名は「責任主体-図面オブジェクト-作図要素」の3階層で構成します。
- 例: C-STR-LINE(施工者-構造物-線)
- 責任主体: C(施工者)、D(設計者)、S(測量者)
- 図面オブジェクト: STR(構造物)、TTL(タイトル枠)、BGD(現況地物)、BMK(基準・区画線)など
- 全角文字や日本語のレイヤー名は使用不可
線色・線種・線幅の規定
- 線色はCAD製図基準で定められた8色(白・赤・緑・青・黄・マゼンタ・シアン・黒)を使用
- 線種は実線・破線・一点鎖線・二点鎖線の4種を使い分ける
- 線幅は0.13mm・0.18mm・0.25mm・0.35mm・0.50mm・0.70mm・1.00mm・1.40mmの8段階
- 区画線の描画には通常、白色の実線(線幅0.35mmまたは0.50mm)を使用
図面表題欄(タイトルブロック)の必須項目
- 工事名称・図面名称・図面番号・縮尺・年月日
- 発注者名・受注者名
- 図面サイズ(A1が標準、A3も可)
文字の規定
- 文字高さは2.5mm・3.5mm・5.0mm・7.0mm・10.0mmのいずれか
- フォントはゴシック体を基本とし、CADソフト固有のフォントは使用しない
- 外字や機種依存文字は使用不可
電子納品で不備を指摘されないための事前確認手順


電子納品の差し戻しは、工事全体の完成検査スケジュールに影響します。以下の手順で事前確認を行い、一発合格を目指してください。
手順1: 電子納品チェックシステムでの自動検証
国土交通省が無償提供している「電子納品チェックシステム」を使い、フォルダ構成・ファイル名・XML管理ファイルの整合性を自動チェックします。エラーが1件でも残っていると差し戻しの対象になります。
手順2: SXFブラウザでの目視確認
CADソフト上では正常に表示されていても、SXF変換後に以下の不具合が発生することがあります。
- 文字の位置ずれ・文字化け(特に半角カナや特殊記号)
- ハッチングパターンの消失や変形
- 線種(破線・一点鎖線)が実線に変換されてしまう
- レイヤー名が変換ルールに従っていない
SXFブラウザ(国交省サイトから無料ダウンロード可能)で全図面を開き、原図と照合してください。
手順3: 管理ファイル(XML)の記述内容確認
INDEX_C.XMLとDRAW.XMLに記載する工事情報(工事番号・路線名・施工箇所など)は、契約書・設計図書と完全に一致させる必要があります。発注者名の表記揺れ(「国土交通省」と「国交省」など)も差し戻し理由になり得ます。
手順4: メディアへの書き込みと最終確認
- CD-RまたはDVD-Rに書き込む(書き換え可能なRWメディアは不可)
- ウイルスチェックを実施し、ウイルス対策ソフト名・定義ファイルの更新日を記録する
- メディアのラベルに工事名称・作成年月日・何枚目/全枚数を記載する
- 書き込み後のメディアで再度チェックシステムを実行し、読み取りエラーがないことを確認する
提出時のチェックポイント|発注者ごとの注意事項

電子納品の基本ルールは国交省要領に統一されていますが、実際の提出では発注者ごとの運用に差があります。以下のポイントを事前に確認してください。
- 事前協議の実施: 工事着手前に発注者と「電子納品に関する事前協議」を行い、対象とする成果品の範囲・ファイル形式・提出方法を合意する。協議内容は議事録に残すこと
- 自治体独自ルールの確認: 都道府県によっては、SFC形式を認めずP21形式のみとする場合や、独自のレイヤー名規則を定めている場合がある
- CALS/ECシステムへの登録: 大規模工事では、電子納品保管管理システム(CALS/EC)へのデータ登録が求められることがある
- 紙図面の併用: 電子納品が原則であっても、完成検査時には紙の出力図面を持参するよう指示されることが多い。A1またはA3での出力に対応できるよう準備する
- 提出部数: CD-Rは正副2枚を提出するのが一般的。メディアごとにデータが同一であることを確認する
この記事のポイント

公共工事の電子納品で図面を提出する際に押さえるべき要点をまとめます。
- ファイル形式はSXF(P21またはSFC)が必須。DWGやJWWは変換が必要
- フォルダ構成は国交省「電子納品等要領」に厳格に準拠する。DRAWINGF・PHOTO・OTHRSの階層構成を守る
- CAD製図基準のレイヤー名・線色・線幅・文字規定を遵守する。JWWやDWGから変換する際は特に注意
- 電子納品チェックシステムとSXFブラウザで二重確認する。差し戻しリスクを最小化
- 発注者との事前協議で提出条件を明確にする。自治体独自ルールの見落としを防ぐ
区画線工事の図面は、横断面図・平面図・数量表など複数の図面種別を含むため、レイヤー構成やファイル命名が複雑になりがちです。社内にCAD製図基準に精通した人材がいない場合、外部の専門サービスを活用することで、差し戻しリスクを回避しながら自社リソースを施工管理に集中させることができます。
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