区画線の塗料規格|JIS K 5665に基づく正しい選定方法

区画線工事で使用する塗料は、JIS K 5665によって厳格に規格化されている。規格の理解が不十分なまま塗料を選定すると、施工後の早期劣化や検査不合格につながる。本記事では、JIS K 5665の体系から塗料タイプ別の特性、品質試験の合格基準、現場での選定フローまで、実務で必要な知識を網羅的に解説する。

JIS K 5665の体系と分類

JIS K 5665の体系と分類

区画線の塗料規格|JIS K 5665に基づく正しい選定方法

JIS K 5665「路面標示用塗料」は、道路や駐車場の区画線に使用する塗料の品質・試験方法・検査基準を定めた日本産業規格である。この規格は塗料を大きく3種類に分類している。

1種(常温ペイント式)は、常温で施工できる液状塗料で、ローラーやスプレーで塗布する。乾燥膜厚は0.3〜0.5mm程度。材料単価が安く、小規模な駐車場や工場構内の区画線に多用される。JIS K 5665では1種をさらに1号(非反射用)と2号(反射用・ガラスビーズ混入)に細分している。

2種(加熱ペイント式)は、50〜80℃に加熱して流動性を高めてから施工する塗料である。常温式より膜厚を確保しやすく、1.0〜1.5mm程度の施工が可能。乾燥時間が短い点も特長だが、加熱装置が必要なため機材コストが上乗せされる。

3種(溶融式)は、180〜220℃で溶融させて施工する熱可塑性塗料で、膜厚は1.5〜2.5mmと厚い。国道・県道などの幹線道路で最も採用実績が多く、公共工事の区画線では事実上の標準仕様となっている。3種も1号(非反射用)と2号(反射用)に分かれる。

溶融式とペイント式の耐久年数比較

溶融式とペイント式の耐久年数比較
溶融式とペイント式の耐久年数比較

塗料タイプの選定で最も重視されるのが耐久年数である。同じ交通量・気候条件下での実績値を比較すると、タイプごとの差は明確に出る。

1種(常温ペイント式)の耐久年数は、交通量の少ない駐車場や構内道路で1〜2年、交通量の多い一般道路では6ヶ月〜1年程度である。膜厚が薄いため、タイヤの摩耗による消失が早い。年間の塗り替え費用を含めたライフサイクルコストでは、必ずしも安価とは限らない。

3種(溶融式)は、一般道路で3〜5年、交通量の少ない路線では5〜8年の耐久実績がある。膜厚が厚く、摩耗に対する耐性が高い。初期費用は常温式の2.5〜3倍だが、塗り替え頻度を考慮すると幹線道路では溶融式のほうがトータルコストで有利になるケースが多い。

具体的な数値で比較すると、幅15cmの白線を100m施工する場合、常温ペイント式の材料費は約3,000〜5,000円、溶融式は約8,000〜12,000円である。ただし常温式は年1回の再施工が必要になるため、5年スパンでは常温式15,000〜25,000円に対し、溶融式は8,000〜12,000円(1回の施工で済む)となる。

なお、2種(加熱ペイント式)は1種と3種の中間的な耐久性(2〜3年)を示すが、加熱装置が必要な割にコストメリットが限定的なため、近年は採用が減少傾向にある。

塗料の品質試験項目と合格基準

塗料の品質試験項目と合格基準
塗料の品質試験項目と合格基準

JIS K 5665では、各種塗料に対して複数の品質試験項目が定められている。施工業者が塗料メーカーの試験成績書を確認する際、以下の項目と基準値を把握しておく必要がある。

乾燥時間は、1種の場合30分以内(常温23℃・湿度50%条件下)、3種の場合は塗布後3分以内の初期固化が求められる。現場では気温や湿度が変動するため、試験成績書の条件と実際の施工環境を照合することが重要である。

耐摩耗性は、テーバー摩耗試験によって評価される。3種(溶融式)の場合、CS-17摩耗輪を使用し、荷重1,000g、回転数1,000回での摩耗量が300mg以下であることが合格基準である。この数値を超える塗料は、高交通量路線での使用に適さない。

色差は、白色塗料の場合、標準色との色差(ΔE)が3.0以下であることが求められる。黄色塗料はΔE 4.0以下が基準となる。施工後の反射輝度とも関連するため、特に夜間の視認性が重要な幹線道路では厳格に管理される。

加熱安定性は、3種(溶融式)に固有の試験項目である。200℃で4時間加熱した後の軟化点変化が10℃以内、かつ色差ΔEが5.0以下であることが条件となる。現場では繰り返し溶融させることがあるため、この基準をクリアしていない塗料は使用を避けるべきである。

付着性は、クロスカット法(JIS K 5600-5-6準拠)で評価される。25マスのカット部分に対し、剥離が全体の5%以下(分類1以下)であることが求められる。路面との密着不良は施工後の早期剥離の原因となるため、プライマー処理との組み合わせも含めて確認が必要である。

路面状況による塗料選定の判断基準

路面状況による塗料選定の判断基準
路面状況による塗料選定の判断基準

同じJIS規格の塗料でも、路面の素材・状態・環境条件によって適性が大きく異なる。現場での判断基準を整理する。

アスファルト舗装の場合、新設舗装(施工後3ヶ月以内)は表面の油分が残存しているため、常温ペイント式は密着不良を起こしやすい。プライマー(下塗り材)の塗布が推奨される。一方、溶融式は高温で塗布するため、アスファルト表面の油分をある程度溶解・一体化でき、密着性の問題は少ない。

コンクリート舗装では、コンクリート特有のアルカリ性(pH 12〜13)が塗料の付着性に影響する。常温ペイント式を使用する場合、エポキシ系プライマーの下塗りが必須となる。溶融式でも、コンクリート面への施工時にはプライマー処理を行うことで剥離リスクを大幅に低減できる。

既存区画線の上塗りは、旧塗膜の種類を確認することが先決である。旧塗膜が溶融式の場合、同種の溶融式塗料であれば熱融着により良好な密着性が得られる。旧塗膜が常温ペイント式の場合は、ケレン(研磨除去)後に施工するのが原則である。異なるタイプの塗料を直接重ね塗りすると、層間剥離の原因となる。

寒冷地・多雨地域では、凍結融解の繰り返しや常時の湿潤環境に耐える必要がある。JIS K 5665の耐水性試験(水中浸漬240時間後の外観変化)の結果が良好な塗料を選定すべきである。北海道・東北地方の公共工事では、発注仕様書で凍結融解試験(300サイクル以上)を追加要求するケースもある。

現場での塗料選定フローチャート

現場での塗料選定フローチャート

実際の現場で塗料を選定する際は、以下の手順で判断すると漏れなく適切な塗料にたどり着ける。

ステップ1:発注仕様書の確認
公共工事の場合、発注者(国土交通省・都道府県・市町村)の仕様書で塗料タイプが指定されていることが多い。国交省の「道路標示設置基準」では、幹線道路の車道区画線には3種2号(溶融反射式)を標準としている。仕様書に指定がある場合、その指定に従うのが大前提となる。

ステップ2:施工箇所の条件整理
交通量(大型車混入率を含む)、路面の種類(アスファルト/コンクリート/インターロッキング)、気候条件(年間降水量・最低気温)、施工面積を整理する。これらの条件が塗料タイプの適否を左右する。

ステップ3:塗料タイプの絞り込み
日交通量5,000台以上の道路 → 3種(溶融式)一択。日交通量1,000〜5,000台 → 3種または2種。日交通量1,000台未満の構内道路・駐車場 → 1種(常温ペイント式)で十分。コスト制約が厳しい場合は1種2号(反射用)を検討する。

ステップ4:塗料メーカーの選定と試験成績書の確認
JIS認証を取得しているメーカーの製品を選定する。試験成績書で前述の品質基準(耐摩耗性・色差・加熱安定性・付着性)が全てクリアされていることを確認する。ロットごとに成績書が発行されているかも重要な確認ポイントである。

ステップ5:プライマーの要否判断
新設アスファルト(3ヶ月以内)→ プライマー推奨。コンクリート面 → エポキシ系プライマー必須。既存塗膜への上塗り(異種)→ ケレン後にプライマー塗布。既存塗膜への上塗り(同種溶融式)→ プライマー不要。

ステップ6:施工計画書への反映
選定した塗料タイプ・メーカー・品番・プライマーの有無・施工膜厚・乾燥時間を施工計画書に記載する。公共工事では、使用材料の承認申請も忘れずに行う。

規格適合塗料の調達と品質管理のポイント

規格適合塗料の調達と品質管理のポイント

JIS K 5665適合塗料を調達する際、以下の点に注意することで施工品質を担保できる。

JISマーク表示の確認が最も基本的なチェックである。JIS認証工場で製造された製品には、缶や梱包にJISマークが表示されている。JISマークがない製品は、たとえ「JIS相当品」と謳っていても規格適合を保証するものではない。公共工事では原則JISマーク品の使用が求められる。

保管条件の遵守も品質維持に直結する。常温ペイント式(1種)は5〜35℃の冷暗所で保管し、製造後12ヶ月以内に使用するのが標準である。溶融式(3種)の粉体塗料は吸湿すると溶融時に発泡し、仕上がりに気泡が残る原因となる。開封後は速やかに使い切るか、密封して乾燥状態を維持する。

施工時の膜厚管理は品質管理の要である。ウェットフィルムゲージ(JIS K 5600-1-7準拠)を用いて塗布直後の膜厚を計測する。溶融式の場合、仕様書で指定された膜厚(一般的に1.5mm)に対し、許容誤差は±0.3mm程度とされる。膜厚が不足すると耐久年数が短縮し、過剰に厚いと乾燥収縮によるクラックが発生する。

反射性能の確認も重要である。2号(反射用)の塗料は、ガラスビーズの散布量と粒度が夜間視認性を左右する。JIS R 3301で規定されるガラスビーズの粒度分布(106〜850μm)と散布量(溶融式の場合、塗料1m²あたり200〜400g)を遵守する。散布が不均一だと、ヘッドライトの反射にムラが生じる。

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ジョージ
ai株式会社 代表取締役
1974年長崎県生まれ。2006年に起業し、理美容室・アパレル・不動産事業を展開。2025年にai株式会社を設立し、デジタル技術を活用した会社運営を実践中。区画線CAD図面製作サービス「きゃどチーム」を運営。

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